労働者健康安全機構 熊本産業保健総合支援センター

調査研究

平成16年度産業保健調査研究

産業医の職務満足度(QWL) 向上に関する調査研究


研究代表者 北野邦俊
調査研究期間 平成16年4月〜17年3月

調査研究の背景

 産業医は、事業場訪問、職場巡視、保健指導、健康教育、衛生委員会委員など、多彩な活動が求められ、原則的にそれらの活動は法的に規定されている。しかしながら、その活動は必ずしも円滑かつ効果的に実施されているとはいえない。現行の産業保健活動を効果的に進めるためにも、労使と産業保健関連スタッフの円滑、かつ効果的な活動が求められる。そのためには、そのなかで核となるべき産業医の産業保健活動に対する理解の向上と変貌する産業に適切に対応できる新たな視点と技術の獲得が求められている。しかしながら、それは、単にそのための知識と技術を習得すればそれが実現するということではなく、産業医のその職務に対する満足度、すなわち、 QWL の向上を図ることが根本的な解決のすじみちである。そのような視点から産業医活動をとらえた調査研究はこれまで十分になされてはいない。熊本産業保健推進連絡事務所では、昨年度本調査研究において、ワークショップの形式で産業医活動の実態について検討し、上記のような背景をふまえて、産業医の QWL を解析するための質問調査表を作成した。

調査研究の目的

 円滑で効果的な産業保健活動が進められるためには、産業医および関連スタッフが主体的に参加、行動できる職場の環境を作らなければならない。そのような視点から、前年度の本調査研究では研究は、ワークショップの形式で、産業医の活動の実態とその問題点を明らかにし、それに基づいて産業医の QWL をゴールとする産業医活動の枠組み(プリシード・プロシードモデル)を設定し、それに基づいた 3種類の質問調査表(産業医の職務とその満足度に関する調査票)を作成した。本年度研究では、それらを用いて、産業医および産業看護職・コーデイネーター等産業保健関連職種および企業の労使を対象に調査を実施し、産業医の QWL の向上を基盤としたこれからの産業の現場における効果的な産業保健活動の理念と技術を産業医および関連スタッフ自らが見出すことの手がかりを得るために企画された。本研究により、産業医および関連スタッフの資質の向上とこれからの産業保健活動に求められる理念と技術を提起することができる。

成果の活用予定

 得られた結果と方法論は産業保健推進センターが開催する研修会のテーマや企業に対する快適職場形成の指導指針として活用できる。

調査研究計画の概要

 前年度本調査研究で作成した 3 種類の質問調査票(産業医用、産業看護職およびコーデイネーター等関連職種用、企業用)を用いて、産業医および産業保健関連職種および企業の労使を対象に調査を実施する。

調査対象者    

  1. 調査対象者は登録産業医全員( 500 名)および産業看護職および関連職種(100名)熊本県下中小企業の企業主(50社)およびその従業者(500名)。
  2. 調査対象者のなかから、同意を得た者を対象(産業医 30 名、産業看護職および関連職種 30名、企業主 10名)に、調査表回答の確認と産業医の活動に関する聞き取り調査を実施する。
  3. 調査データの解析は、本調査研究班員と前年度に協力してもらったワークショップメンバーで進める。
  4. グループワークにより、産業保健活動システムモデル(フローチャート)を作成する。

関連調査研究の動向

 産業医活動の実態とあり方については、これまで多くの調査研究がなされており、その実態と問題点の把握については一定の結果が出されているが、十年一日のごとき結果の報告が繰り返され、必ずしも、現場に対して効果的なフィードバックがなされていない。その解決策として、産業医およびその関連スタッフが主体的に参加する調査研究の開発と実施が必要である。

調査研究体制

北野邦俊 熊本産業保健推進連絡事務所 所長 調査研究総括
宮川太平 熊本労災病院 院長 調査研究コーデイネーター
上田 厚 熊本産業保健推進連絡事務所 相談員 調査研究企画、実施
小柳敦子 熊本産業保健推進連絡事務所 相談員 調査研究コーデイネーター
広瀬靖子 熊本産業保健推進連絡事務所 相談員 調査研究コーデイネーター
原田幸一 熊本大学大学院医学薬学研究部 助教授 データ解析

 
労働者健康安全機構 熊本産業保健総合支援センター/調査研究/【平成16年度】産業医の職務満足度(QWL) 向上に関する調査研究