定期健康診断等における診断項目の取扱い等(平成30年4月1日からの取扱い) |
厚生労働省は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号、以下「法」という。)に基づく定期健康診断について、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づく特定健康診査の在り方等の検討と併せて、「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の在り方に関する検討会」を開催し、その在り方等について検討を行い、本検討を踏まえて、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「規則」という。)第43条に基づく雇入時の健康診断、規則第44条に基づく定期健康診断、規則第45条に基づく特定業務従事者の健康診断、規則第45条の2に基づく海外派遣労働者の健康診断の診断項目に関する取扱い、留意事項の通達を発出しましたので、関係者への周知徹底を図るとともに的確な実施に遺憾なきをよろしくお願いいたします。
なお、特定健康診査の新たな取り扱い等と併せて実施することが必要であることから、特定健康診査との整合性を取った血中脂質検査、血糖検査、尿検査等については、平成30年4月1日からの取扱いとされています。
1 肝機能検査
GPT、γ-GTP は、肝機能障害の把握とともに、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症予測能があるとされたため、医師からの意見聴取の際及び必要な措置を講じる際に留意すること。
2 血中脂質検査
引き続き LDL コレステロール、HDL コレステロール、トリグリセライドを項目とする。LDL コレステロールの評価方法を従前は示していなかったところであるが、その評価に当たっては、フリードワルド式によって総コレステロールから求める方法、(ただし、トリグリセライド 400mg/dl 以上や食後採血の場合にはNon-HDL コレステロールにて評価する。)又は、本検査の円滑な実施等のため、LDLコレステロール直接測定法によることも引き続き可能とする。
LDL コレステロールを、フリードワルド式によって総コレステロールから求める場合には、今後は、健康診断個人票の備考欄に総コレステロール値を分かるように記載するとともに、トリグリセライド 400mg/dl 以上や食後採血の場合にNon-HDL コレステロールにて評価する場合には、備考欄に Non-HDL コレステロール値を分かるように記載すること。なお、備考欄に、食後からの採血時間を記載すること。
よって、血中脂質検査においては、HDL コレステロール及びトリグリセライドとともに、本人の状況等を産業医等の医師が判断して総コレステロール又は LDLコレステロール(直接測定法)を選択した 3 データを測定する。
注)
フリードワルド式による LDL コレステロール=総コレステロール−HDL コレステロール−トリグリセライド/5
Non-HDL コレステロール=総コレステロール−HDL コレステロール
3 血糖検査
血糖検査は、空腹時血糖に加え随時血糖を認めることとしたので、空腹時血糖又は随時血糖を健康診断項目とすること。
また、HbA1cは、過去 1〜3 か月程度の平均血糖値を反映したものであること、就業上の措置においても活用できる場合があること等から、医師が必要と認めた場合には同一検体等を利用して実施することが望ましい検査項目とする。
なお、血糖検査は原則空腹時に行われるべきではあるが、やむを得ず食事摂取後に行われる場合で、検査値を特定健康診査に活用するときは、食直後の採血(特定健康診査では食直後の採血は食事開始から 3.5 時間未満の採血としている。)は避けることが必要である。
また、HbA1c については、1)糖尿病の罹患者でその後の状況を把握し就業上の措置において活用する場合、2)糖尿病の発症リスクの予測因子(BMI、血圧等)、従前の検査値等を勘案し、血糖値に加えて HbA1c 値により糖尿病であるか否か診断し就業上の措置において活用する場合などが考えられることに留意すること。
なお、本通達をもって平成 10 年 12 月 15 日付け基発第 697 号「一般健康診断における血糖検査の取扱いについて」及び平成 20 年1月 17 日付け基発第 0117001号保発第 0117003 号「特定健康診査等の実施に関する協力依頼について」の別紙の4のうち、血糖検査についてヘモグロビン A1c 検査で代替させることが可能である取扱いは廃止することとする。
4 貧血検査
貧血検査(血色素量及び赤血球数の検査)の医師による省略の判断においては、貧血は、高齢期のみならず、若年の女性にも一定程度見られることから、7(1)の留意事項に留意すること。
5 尿検査等
尿検査については、尿中の糖及び蛋白の有無の検査を実施しているが、糖尿病性腎症の原因と考えられる高血糖、腎硬化症の原因と考えられる高血圧等の基礎疾患を含めて労働者の健康状態等を勘案しながら医師が必要と認めた場合には、従来の検査項目に加え、血清クレアチニン検査を、血液検査に用いた検体と同一検体等を利用して実施することが望ましいこと。
6 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
「他覚症状」に関するものについては、昭和 47 年基発第 601 号に基づき、受診者本人の訴え及び問視診に基づき異常の疑いのある事項を中心として医師の判断により検査項目を選定して行うとしているが、その際の選定して行う検査項目は、打診、聴診、触診などの臨床診察的な手法による検査であること。
特殊健康診断の対象とされていない化学物質を取り扱う労働者については、必要に応じて事業者と健康診断を実施する医師等が連携し、安全データシート(SDS)で記載されている健康影響が見られるか否か等の調査を行うことが重要であることに留意すること。
7 健康診断を実施する場合の留意
(1)一部においては、血液検査等の省略の判断を医師でない者が一律に行うなど、適切に省略の判断が行われていないことが懸念される。
規則第 44 条第 2 項により、厚生労働省告示に基づく、血糖検査、貧血検査等を省略する場合の判断は、一律な省略ではなく、経時的な変化や自他覚症状を勘案するなどにより、個々の労働者ごとに医師が省略が可能であると認める場合においてのみ可能であること。
(2)健康診断の実施を委託する場合には、委託先の健康診断機関が、精度管理を含め健康診断を適切に実施しているかについての報告を求める等適切な管理を実施すること。
8 その他
(1)労働者が健康診断時に医療機関で治療中である場合には、その際の健康診断は、労働者本人の負担を軽減する観点から、エックス線写真など主治医において既に取得されているデータを取得、活用し診断すること。
(2)法第 66 条の 4 に基づく医師等からの意見聴取の対象となるか否かを示す健康診断個人票の「医師の診断」の欄に記入する際には、健康診断項目のいずれかに所見があった場合、経時的な変化も勘案して記入すること。
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※「特定健診及び特定保健指導の実施に関する基準」に関する大臣告示【厚生労働省】