労働者健康安全機構 熊本産業保健総合支援センター

調査研究

平成12年度産業保健調査研究

女性労働者のストレス対処能力の向上と支援システムの構築に関する調査研究

【調査研究の目的と成果】

 近年、さまざまな産業における女性の進出はめざましいものがあり、それにともない、女性労働者の安全と健康に対する理念や技術にも新たな支店が求められている。
 また、職域における女性の安全と健康を高めることは、職域全体の従業者の安全と健康を高め、そのことが快適職場の形成につながるものと思われる。
 この観点から、熊本産業保健推進連絡事務所では、熊本産業看護研究会の協力をえ、会員有志をメンバーとするワークショップ形式で、平成10年度「中小規模事業場における女性労働と安全、健康、QWLに関する調査研究」、平成11年度「女性労働者の健康、とくにメンタルヘルスの向上に関する調査研究」という課題の調査研究が実施された。
 その結果、女性労働者のQWLを評価し、それを規定する要素の構造を解析するための調査表「働く女性の健康と生活に関する調査表」が作成され、それを用いた調査が実施された。
 その結果、女性労働者の安全と健康を高める最も直接的で重要な要素として、クオリティ オブ ワーキングライフ(QWL)につながるメンタルヘルスの向上があげられ、そのためには、女性労働者のライフスタイルの改善と職域や地域に女性のストレス対処能力の向上を支援する制度やサポートネットワークの構築がもっとも有効な対策であることが示唆された。
 しかしながら、女性労働者のストレス対処能力の向上にづながる職業生活を中心としたライフスタイルの実態の解析やそのための適切なネットワークを地域や職域に構築するためのプロセスとしては、ほとんど系統的な研究や実践勝郎の事例は見られない。
 そこで、我々は、これまでの一連の調査研究を系統的にまとめ、女性労働者のQWLの向上につながる支援システムを構築するための手がかりを得るために、安全と健康の基本的な要素の一つであるメンタルヘルスについて、とくに産業看護職を対象に、その実態を把握し、得られた結果に基づいて、女性労働者のメンタルヘルス対策に関する現実的な方法/システムを提起することを目的とした調査研究を規格、実施した。
 本研究は、これまでに引き続き産業看護職をメンバーとするワークショップ形式で進めたが、目的とする支援システムの構築に際し、新たにフォーカス グループインタビューの技法を採り入れ、職域および地域のネットワーク資源を抽出し、それらを用いてネットワークシステムを構築するための手がかりを検討した。
 このように、本研究は先行する平成10年度、11年度の調査研究の最終段階と位置づけられるようなものなので、本報告は、本年度研究と中心に3年間の研究のプロセスとその成果をまとめるかたちで作成した。

【成果のまとめ】

  1. 新しい健康観と労働感に基づいた健康で快適な職場を創造することにつながる女性労働と健康の評価に関する調査票を、産業看護職のグループワークにより作成した。
  2. 作成された調査票は、女性のQWLを評価し、現場での有効な対策を提案するために妥当なツールと思われた。
  3. 産業看護職を対象に、本調査票を用いた調査を実施し、対象集団のQWLの実態とそれを想定する要素を検討し、本調査票の有効性を確かめた。
  4. フォーカス グループインタビューを用いて、女性労働者のQWLの向上に効果的なネットワーク資源の抽出とネットワークシステムの構築を検討することが出来た。
  5. 女性労働者のQWLを高め、快適職場を形成するための産業保健活動の枠組みづくりについて、職域におけるヘルスプロモーションの理念と技術に基づき、プリシード・プロシード モデルを用いて作成した調査票による量的調査とフォーカス グループインタビューという質的調査を組み合わせた調査研究のモデルを提起する事が出来た。
  6. 調査研究をグループ学習の形式で進めることによって、産業保健活動を現場で進めるための七機と技術を習得する手がかりが得られ、快適職場の形成につながる産業看護職の資質と実践技術能力の向上に貢献した。

 
労働者健康安全機構 熊本産業保健総合支援センター/調査研究/【平成12年度】女性労働者のストレス対処能力の向上と支援システムの構築に関する調査研究