平成8年度産業保健調査研究
職域におけるヘルス・プロモーションの展開に関する実証的研究
−産業保健活動の客観的評価方法の作成−
【調査研究の目的と成果】
わが国の労働者を取り巻く状況を見ると、産業構造、疾病構造および技術革新による作業様態の変化、高齢者社会の到来などにより、産業保健の主な問題は、従来からの急性・慢性中毒疾患から、成人病や生活習慣病といわれるような慢性疾患、メンタルヘルス、作業関連疾患等に移ってきている。また、産業保健・安全衛生システムが十分に機能してないと思われる中小規模の事業場労働者に対する保健サービスをどのように展開するかは、特に地方における産業保健活動を推進するうえで大きな課題のひとつである。
産業保健活動を効果的に推進するためには、事業場の産業保健活動を客観的に評価し、問題点を把握することが出発点となり、これまで事業場の産業保健活動を評価する方法がいくつか提案されてきた。しかし、これらは必ずしも評価後の活動計画立案や実施へ直接結びつくとは言い難い。本研究は、特に産業保健活動が不十分な中小企業の事業場を対象として、産業保健活動が不十分な中小規模の事業場を対象として、産業保健活動を計画・実施することを目標に置いた評価法(アセスメント表)を作成することを目的としている。
【報告書の構成】
本報告書は、以下の 5 つの章より構成されている。
第1章は、緒言として産業保健の現状を再認識し、特に本研究の鍵概念であるヘルス・プロモーション等について検討、ライフスタイル・チェンジやメンタルヘルスへの取り組みの重要性を強調し、産業保健従事者の果たすべき役割について論じた。
第2章は、本研究で作成したアセスメント表の意義を記した。評価する目的と産業保健活動の計画―実施―再評価という一連のプロセスでの位置づけを示した。
第3章は、本研究で作成したアセスメント表の利用方法について解説した。本研究の目的である保健活動の計画立案と実施は次年度以降に研究を進める予定としており、現時点ではアセスメント表の利用も不完全になることは了承していただきたい。
第4章はアセスメント表の作成の過程をまとめた。本研究は、熊本産業看護研究会の前面的な協力を得て行ったもので、評価する立場として保健看護職の立場を重視し、アセスメント表作成の過程に係わる保健・看護職の力量形成という副目的について論じた。
第5章は、作成したアセスメント表とその解説を評価項目ごとに記した。作成過程の議論も含めて、各項目ごとに若干の解説を加えており、アセスメント表の理解と産業保健の知見を深めるために利用していただきたい。
末尾には、完成したアセスメント表を付けた。
このアセスメント表の作成には 1 年間の検討期間しか設けられておらず、実際の利用にあたり、いくつかの問題点があると思われるが、今後、批判や助言等を受けながら、より実用的なアセスメント表へと改良していきたいと考えている。貴社の産業保健活動に少なからず寄与できれば幸いである。
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