労働者健康安全機構 熊本産業保健総合支援センター

調査研究

平成9年度産業保健調査研究

産業保健活動計画作成の理論と実践

【調査研究の目的と成果】

 地域保健では、平成元年に高齢者保健福祉推進十カ年戦略(ゴールドプラン)が、平成8年度に市町村母子保健計画が策定され、現在、多くの市町村は総合的な保健計画の策定に取り組んでいる。
 産業保健では、安全衛生の領域については安全衛生管理計画の作成が各事業所に義務づけられているものの、保健の領域についてはどうであろうか。いくつかの大企業は霊書きとして、法規を準拠することを目的とした、あるいは一部の専門家や健診機関にお任せした場当たり的な活動に終始する事業所が多いと思われる。他方で、保健活動の計画立案(および評価)に関する学術的な研究や方法論の確立への不十分な取り組みがこうした現状を生む原因のひとつと考えられる。
 本調査研究では、産業保健の現場、特に中規模の事業所を対象にした産業保健計画作成の方法論の確立と実践を目的としている。これは平成8年度に実施した産業保健活動アセスメント表の作成に引き継ぐもので、アセスメント表を用いた保健活動の評価(現状把握)をもとに計画を作成する試みである。産業保健活動の計画作成マニュアルと計画書のモデルの提示、およびモデル事業所での実際の計画書作成を最終的なゴールとしている。

  1. 保健活動計画作成の理論と方法論の提示
     産業保健活動計画の理論と作成の方法論の確立を試みた。計画作成の基本的な考え方と進め方を検討し、主にワークシートを用いた作成の手順を提示した。
  2. 保健活動計画作成の実践
     熊本県内の3つの事業所をモデルケースに保健活動計画の作成を実施した。各事業所の協力を得るとともに、熊本産業看護研究会のメンバーがチームを組み、月1回の検討会で保健計画の理論を学びながら実際の計画作成にあたった。
  3. 特別研修会の開催
     保健活動の計画作成に関連する研修会として、順天堂大学医学部 公衆衛生学 武藤孝司助教授による「健康教育の評価」、産業医科大学産業保健科学研究所 産業保健経済学 池田正人教授による「産業保健活動のコスト分析」をテーマにした研修会を行った。いずれも計画作成と表裏一体である“保健活動の評価”についての講演とグループワークによる事例検討を実施した。これらの研修会には熊本産業看護研究会を中心に多数よ参加があった。

 
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