平成17年度産業保健調査研究
衛生管理者の職務満足度(QWL)の向上に関する調査研究
調査研究計画の概要
調査研究の対象
ワークショップの形式で衛生管理者の職務満足度(Quality of Working
Life :QWL)を評価する調査表を開発し、熊本県下中小規模事業場より 抽出した企業の衛生管理者に対して、留置法による調査を実施し、衛生管理者のQWLの実態とそれを規定する要素とその構造を明らかにする。本調査研究は以下のプロセスで実施した。
- 熊本産業看護研究会員より、20名をワークショップメンバーとして選定し、毎月1回、ワークショップを開催し、調査表を作成した。
- 調査表調査を実施した。調査対象者は熊本県下中小規模企業から無作為に抽出された800社の衛生管理者1200名とした。
- 調査データの解析を本調査研究班員とワークショップメンバーで行う。
- 解析の結果を基に、衛生管理者のQWLを高めることのできる産業保健活動システムモデル(フローチャート)を作成した。
調査研究の背景・必要性
労働者および産業保健関連職種が主体的に参加、行動できる職場の環境をつくらなければならない。そのなかで、衛生管理者は、それぞれの企業における産業保健管理のキーマンとして多彩な活動が求められ、原則的にそれらの活動は法的に規定されている。
しかしながら、その活動は必ずしも円滑かつ効果的に実施されているとはいえない。その解決のためには、単に衛生管理者としての知識と技術を習得すればよいということではなく、衛生管理者の職務に対する満足度(QWL)の向上を図ることが根本的な対策である。
そのような視点から衛生管理者の活動をとらえた調査研究はこれまで十分になされてはいない。私たちは、これまでの本調査研究事業において、そのような視点から、産業看護職や産業医におけるQWLの実態とそれを向上させる要素について検討してきた。
今回同様の手法で調査研究を実施することにより、衛生管理者自らがそれぞれのQWLに目を向けることにより、産業の現場における効果的な産業保健活動の理念と技術を衛生管理者自らが気づく手がかりを得ることができる。また私たちは、本調査研究を調査研究スタッフだけでなく、熊本産業看護研究会の会員によるワークショップで進めてきたが、このプロセス事態が産業保健関連職種の資質の向上に多大な貢献を果たしてきているように思われる。
調査研究の目的・成果
本調査研究は、衛生管理者のQWLの実態とそれに関与する要素とその構造を明らかにすることにより、衛生管理者の効果的な職務のあり方について検討し、それに基づいて、最終的に効果的な産業保健管理システムを職場につくることを目的としている。
そのため、本調査研究は、衛生管理者のQWLとそれを規定する要素とその構造を明らかにし、それに基づいて衛生管理者のQWLをゴールとする衛生管理者活動の枠組み(プリシード・プロシードモデル)を設定し、それに基づいた質問調査表(衛生管理者の職務とその満足度に関する調査票)を作成し、それらを用いて、熊本県下中小規模企業から抽出した企業に対して調査を実施、解析するという一連のプロセスで構成されている。本研究により、衛生管理者の資質の向上のみならず、他の産業保健関連職種の資質の向上、効果的な現場の産業保健活動のありかたについて、その理念と技術を提起することができた。 |