リスク評価結果等に基づく労働者の健康障害防止対策の徹底について
平成30年度の「化学物質のリスク評価検討会」において、1,2-酸化ブチレン等9物質についてリスク評価を行われ、今般「平成30年度化学物質のリスク評価検討会報告書(以下「報告書」という。)が取りまとめられました。一方、1-ブロモプロパンについて、ばく露実態調査の結果、高いばく露が明らかとなったところです。
また、「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」において、酸化チタンに係る措置の検討を中断することとし、粉状物質である酸化チタンは長期間にわたって多量に吸入すると肺障害の原因となり得るものであるため、関係業界に対し注意喚起することとされたところです。
報告書等を踏まえ、下記のとおり労働者の健康障害防止対策について取りまとめられましたので周知いただきますようお願い申しあげます。
なお、1,2-酸化ブチレン等9物質に関する有害性情報等についてはリスク評価を行った物質(9物質)に関する情報を参照いただくとともに、報告書全文(本文及び別冊)等は厚生労働省のウェブサイトに掲載されていますのでお知らせします。
1.1,2-酸化ブチレン
初期リスク評価の結果、一部の事業場で、個人ばく露の推定値が二次評価値※を上回ると判定されたことから、ばく露の高い要因等を明らかにするため、詳細なリスク評価を行うことを予定している。また、ヒトにおける経皮吸収が指摘されている物質であることから、経皮吸収に関する知見の収集や保護具の使用等作業実態のデータを積み重ねた上で、経費吸収の観点も含め、リスク評価を確定させることとする。
しかしながら、当該物質は有害性の高い物質であり、かつ、経皮吸収も含め、事業場において高いばく露が生じる可能性があることから、今後実施する詳細リスク評価の結果を待たず、速やかに、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第57条の3に規定される危険性又は有害性等の調査を行うとともに、その結果に基づき、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第576条、第577条、第593条及び第594条に規定される措置等のリスク低減措置を講ずること。
2.ジフェニルアミン、ビフェニル及びレソルシノール
初期リスク評価の結果、個人ばく露が二次評価値※を下回り、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられるが、ヒトにおける経皮吸収が指摘されている物質であることから、経皮吸収に関する知見の収集や保護具の使用等作業実態のデータを積み重ねた上で、経皮吸収の観点も含め、リスク評価を確定させることを予定されている。
しかしながら、当該物質は、有害性の高い物質であり、かつ、経皮吸収によるばく露の可能性があることから、今後実施するリスク評価の結果を待たず、速やかに、労働安全衛生法第57条の3に規定される危険性又は有害性等の調査を行うとともに、その結果に基づき、労働安全衛生規則第576条、第577条、第593条及び第594条に規定される措置等のリスク低減措置を講ずること。
3.ノルマルーオクタン、酢酸イソプロピル、ジメチルアミン、ビニルトルエン及びメチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート
初期リスク評価の結果、個人ばく露が二次評価値※を下回り、ばく露によるリスクは低いと考えられる。
しかしながら、当該物質は、有害性の高い物質であることから、速やかに、労働安全衛生法第57条の3に規定される危険性又は有害性等の調査を行うとともに、その結果に基づき、労働安全衛生規則第576条、第577条及び第593条に規定される措置等のリスク低減措置を講ずること。
4.1-ブロモプロパン
当該物質は、今後リスク評価を行うことを予定しているが、ばく露実態調査の結果、金属製品の洗浄作業等において高いばく露が見受けられた(二次評価値※は定めていないが、日本産業衛生学会や米国産業衛生専門家会議(ACGIH)の勧告するばく露限界値を超える個人ばく露がみられた。)
当該物質は有害性の高い物質であり、かつ、事業場において高いばく露が生じる可能性があることから、今後実施するリスク評価の結果を待たず、速やかに、労働安全衛生法第57条の3に規定される危険性又は有害性等の調査を行うとともに、その結果に基づき、労働安全衛生規則第576条、第577条及び第593条に規定される措置等のリスク措置等を講ずること。
5.酸化チタン(Ⅳ)
リスク評価の結果を踏まえ、「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」において措置の検討を行われてきたが、検討をいったん中断し、日本バイオアッセイ研究センターにおける長期発がん性試験の結果等新たな知見がでそろったところで、再度リスク固有の毒性の有無にかかわらず、粉状物質である酸化チタンを長期間にわたって多量に吸入すれば、肺障害の原因となり得るものであるため、関係業界に対し、改めて注意喚起するとされたところである(「酸化チタンの措置検討に係る今後の対応について」(「第1回化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」資料1)参照。)。
ついては、粉状物質である酸化チタンによる健康障害を防止するため、平成29年10月24日付け基安発第1024第1号別紙「粉状物質の有害性情報の伝達による健康障害防止のための取組」に準じ、ばく露防止対策を講じること。この場合において、日本産業衛生学会が酸化チタン(Ⅳ)(二酸化チタン)を第2種粉じんに指定していることから、当該別紙3に該当する日本産業衛生学会の許容濃度は、吸入性粉じんに対し1mg/㎥、総粉じんに対し4mg/㎥と読み替えること。なお、「粉状の酸化チタンを袋詰めする場所における作業」については、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号)第2条に定める粉じん作業に該当することから、同令に規定される措置を講ずる必要があること。
※リスク評価において個人ばく露を評価するための基準値。労働者が勤労生涯を通じて週40時間当該物質にばく露した場合にも悪影響を受けることはないであろうと推測される濃度として、原則、日本産業衛生学会等の勧告するばく露限界値を採用している。
<参考条文>
●労働安全衛生規則