大雨災害による被災地での健康を守るために

お役立ち情報
2020-07-14

 

 今回の令和2年九州豪雨により、広範に及ぶ地域で河川氾濫、浸水被害が発生し、多くの尊い命が失われました。被災地での避難所等における生活、災害復旧活動が長期に及ぶことにより、様々な健康への影響が懸念され、健康を守るための対策が重要です。

 被災された労働者やそのご家族が病気にかからないよう、また、できるだけ健康に過ごしていただくため、大切なことをまとめました。事業場にも、これらのことを知っていただき、ご配慮いただくようお願いいたします。

 

1 仕事・生活・身の回りのことについて

(1)暑さへの対策

・暑い日が続く季節となってきたため、脱水や熱中症で体調を崩さないように注意することが必要です。日中に外で作業するときには、帽子の着用、日陰の利用などにより暑さを避け、こまめに水分・塩分補給をしましょう。特にコロナウイルス感染症の予防対策によりマスクを着用する場合には、熱中症のリスクが高くなります。マスクを着用すると熱が逃げにくくなったり、気づかないうちに脱水になるなど、体温調節がしづらくなってしまいます。屋外で人と2m以上(十分な距離)離れている時は熱中症を防ぐためにマスクをはずしましょう。また、マスク着用時は、激しい運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給をしましょう。気温、湿度が高い時は特に注意しましょう。節電・節約を意識するあまり、エアコン等を使わず熱中症になることがないよう、適度にエアコン等を使用することも重要です。エアコン使用中も窓とドアなど2か所を開けたり、扇風機や換気扇を併用して、こまめに換気をしましょう。

 

(2)水分について

[1]水分の確保

・様々なストレスや、トイレが整備されないことが原因で、水分を取る量が減りがちです。また、気温が高い時には脱水状態になりやすいので、こまめに水分をとりましょう。特に高齢者は脱水に気付きにくく、こうした影響を受けやすく、尿路の感染症や心筋梗塞、エコノミークラス症候群などの原因にもなるので、しっかりと水分をとるようにしましょう。

[2]飲料水の衛生

・給水車による汲み置きの水は、できるだけ当日給水のものを使用しましょう。

・井戸水をやむを得ず使用する時は、煮沸等殺菌することに気を付けましょう。

 

(3)食事について

[1]栄養をとる

・できるだけ、いろいろな食物をバランスよく食べるようにしましょう。

 ※より詳しい情報は、(独)国立健康・栄養研究所のホームページで「災害時の栄養情報ツール」が提供されています。

[2]食品の衛生

・調理の前や食事の前には、手洗いを励行しましょう。

・食料は、冷暗所での保管を心がける等、適切な温度管理を行いましょう。

・加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱しましょう。

・提供された食事は、早めに食べましょう。

・消費期限の過ぎた食品は保存せず、捨てましょう。

・使用した調理器具等は、しっかり洗浄しましょう。

・下痢、腹痛、嘔吐、発熱等の症状がある方や手に傷のある方は、食品を取り扱う作業をしないようにしましょう。

(4)トイレの衛生

・利用者の数に応じた手洗い場とトイレを設置しましょう。男性用、女性用を分けるなど利用しやすいようにしましょう。

・使用後は、手指を流水・石鹸で洗い、消毒を励行しましょう。

・トイレは、定期的に清掃・消毒を行いましょう。

2 疾病の予防

(1)粉じんから身を守る

 家屋などが倒壊すると、コンクリートや断熱と耐火被覆に用いられた壁材などが大気中へ舞ったり、土砂などが乾燥して細かい粒になったりします。これら「粉じん」を長期間吸い込んだ場合、肺にそれらが蓄積することで、「じん肺」という病気にかかる可能性があります。「じん肺」は、建造物の解体などに従事する方におこりやすく、初期には自覚症状が無いため、気づかない間に進行し、やがて咳、痰、息切れがおこり、さらに進行すると呼吸困難、動悸、さらには肺性心といって、心臓が悪くなり、全身の症状が出現します。

 「じん肺」を根治する方法は無いため、予防が非常に重要です。粉じんの発生する現場での作業は、専門の業者などに依頼することが薦められますが、個人等で作業する場合には、以下の方法をできるだけ取り入れてください。

1. 粉じんの発生をおさえましょう。

  ・水をまいたり、粉状のものはあらかじめ水で濡らしましょう。

2. 粉じんを除去しましょう

  ・排気装置、除じん装置があれば使用しましょう。

3. 室内で作業をする場合には換気をしましょう

4. 粉じんの吸入を防ぎましょう

  ・使い捨て式防じんマスクなどを着用しましょう。

  ・粉じんが付着しにくい服装を選びましょう。

5. 作業後、咳、痰、息切れが続く場合は、医師、保健師に相談しましょう。

●マスクの着用について

 粉じんが舞い上がるような環境の中では、マスクを用いることが必要です。マスクは、防じんマスクやN95マスクなどを使用することが望ましいのですが、これらが手に入らない場合や、粉じんにそれほど長くばく露されない状況であれば、花粉防止用マスクなどの活用が考えられます。これからの季節、気温が上がりますが、粉じんの吸入を防いで健康を守るために、作業現場等においては暑くてもマスクで鼻と口を同時に覆い、顔にフィットさせて正しく着用することが重要です。

 

3 こころのケア

  今回の大雨による災害のように大変重いストレスにさらされると、程度の差はあっても誰でも、不安や心配などの反応が表れます。まずは休息や睡眠をできるだけとるようにしましょう。

 これらの不安、心配の多くは時間の経過とともに回復することが知られています。

 不安や心配を和らげる呼吸法として、「6秒で大きく吐き、6秒で大きく吸う、朝、夕5分ずつ」行う方法もあります。実践してみましょう。

 しかし、

 1)心配で、イライラする、怒りっぽくなる。

 2)眠れない。

 3)動悸(どうき)、息切れで、苦しいと感じる。

 などの症状が続くときは無理をせずに、まずは身近な人や、専門の相談窓口に相談してみましょう。

 また普段からお互いに声を掛け合うなど、コミュニケーションを取ることでこころのケアをすることが大切です。

 

 職場における災害時のこころのケアマニュアル

   熊本産業保健こころの健康アドバイザー制度

 

 

 

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