事業場における労働者の健康保持増進のための指針の一部改正

行政の動向
2021-02-15

 

 事業場における労働者の健康の保持増進については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「安衛法」という。)第70条の2第1項の規定に基づき、事業場における労働者の健康保持増進措置を推進するため、昭和63年に、事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和63年健康保持増進のための指針公示第1号。以下「指針」という。)を策定し、指針に沿った取組が普及されてきたところです。

 また、令和2年には、指針の策定から30年以上が経過し、産業構造の変化や高齢化の一層の進展、働き方の変化等、日本の社会経済情勢が大きく変化していることを踏まえ、事業場における健康保持増進対策がより推進されるよう必要な見直しを行い、事業者は健康保持増進対策の推進体制を確立するために、労働衛生機関、中央労働災害防止協会、スポーツクラブ、医療保険者、地域の医師会や歯科医師会、地方公共団体又は産業保健総合支援センター等の事業場外資源を、事業場の実態に即して活用することとされたところです。

 一方で、医療保険制度において、糖尿病をはじめとする生活習慣病の発症や重症化を予防し、医療費を適正化するため、医療保険者が法定義務の保健事業として、特定健康診査及び法定保健指導を行っており、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号。以下「高確法」という。)第27条第2項及び第3項の規定に基づき、医療保険者から安衛法に基づく健康診断の記録の写しの提供の求めがあった場合に、事業者は当該記録の写しを医療保険者に提供しなければならないこととされています。

 また、令和3年3月からは、マイナポータルを通じて本人が自らの特定健康診査情報等を閲覧することができる仕組みが稼働されることとなっており、事業者から医療保険者に提供された健康診断の結果は、医療保険者を通じてオンライン資格確認等システムに格納されることで、特定健康診査情報としてマイナポータルを用いて本人閲覧ができるようになる予定です。

 事業者から医療保険者に安衛法に基づく健康診断の記録の写しを提供することは、データヘルスやコラボヘルス等の推進に資するとともに、マイナポータルを用いて労働者が自らの健康データの変化を把握し、自らの健康管理に役立てることが可能になることから、労働者の健康保持増進につながり、労働者が健康になることによって、労働災害の防止、企業の生産性向上、経営改善及び経済成長にもつながるものです。

 これらを踏まえ、安衛法に基づく健康診断の記録の写しの提供やコラボヘルスの取組等、事業者と医療保険者とが連携した健康保持増進対策がより推進されるよう、今般、指針の改正が行われました。

 

 

 1 改正の内容

(1)健康保持増進対策の基本的考え方関係

 事業者と医療保険者とが連携した健康保持増進対策がより推進されるよう、コラボヘルスの推進が求められていることを追加されました。

(2)健康保持増進措置の内容関係

 健康保持増進措置の検討に当たって、安衛法に基づく健康診断の結果等を医療保険者に提供する必要があること及びそのデータを医療保険者と連携して事業場内外の複数の集団間のデータと比較し健康保持増進等に係る取組の決定等に活用することが望ましいこととされました。

(3)その他

 個人情報の取扱いについて、医療保険者から安衛法に基づく健康診断の記録の写しの提供の求めがあった場合に、事業者がその記録の写しを医療保険者に提供することは、高確法に基づく義務であるため、第三者提供に係る本人の同意が不要であることを示されました。

 

 

 事業場における労働者の健康保持増進のための指針(令和3年2月8日改正)【厚生労働省ホームページ】

 

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