労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について【令和6年4月30日公布】

行政の動向
2024-05-07

 

 建設業等の事業場で就業する一人親方等(個人事業者等)の労働安全衛生法に基づく措置の対象

第1 改正の趣旨

 令和4年省令は、令和3年5月 17 日に出されたいわゆる「建設アスベスト訴訟」の最高裁判決を踏まえ、法第 22 条を根拠とする省令の条文について改正するために制定したものであるが、この省令について検討を行った労働政策審議会安全衛生分科会において、法第 22 条以外の規定について労働者以外の者に対する保護措置のあり方、注文者による保護措置のあり方、個人事業者自身による事業者としての保護措置のあり方などについて、別途検討の場を設けて検討することとされた。これを受け、令和4年5月から令和5年 10 月まで「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」が開催され、令和5年 10 月 27 日に報告書が公 表された。

 同報告書において、「安衛法第 25 条に基づく「災害発生時等の作業場所からの退避」や安衛法第 20 条、第 21 条に基づく「立入禁止等」については、ある作業場所の管理権原に着目した措置であり、雇用関係や請負関係にかかわらず、当該場所で 作業に従事する者を対象として、事業者に措置義務を課していることを踏まえれば、「有害性」と「危険性」で対応に差を設ける合理性はないため、安衛法第 22 条以外の条文に関しても、速やかに所要の省令改正を行うこととする」とされたことを 踏まえ、改正省令においては、労働者と同じ場所で働く労働者以外の一人親方等に対しても、労働者と同等の保護措置を図る観点から、法第 27 条の規定に基づく法第 20 条及び第 21 条に係る労働安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 32 号。以下 「安衛則」という。)、ボイラー及び圧力容器安全規則(昭和 47 年労働省令第 33 号。 以下「ボイラー則」という。)、クレーン等安全規則(昭和 47 年労働省令第 34 号。 以下「クレーン則」という。)及びゴンドラ安全規則(昭和 47 年労働省令第 35 号。 以下「ゴンドラ則」という。)の規定を改正するものである。

 

第2 改正の概要

1 改正の要点

 機械等による危険、特定の業務における作業方法から生ずる危険及び特定の場 所に係る危険を防止するため、法第 20 条及び第 21 条等の規定に基づく4省令を改正し、当該危険に係る業務又は作業を行う事業者に対して、

・ 当該危険に係る業務又は作業を行う場所において、他の作業に従事する一人親方等の労働者以外の者に対しても労働者と同等の保護措置を講ずる義務(ただし、場所の管理権原に基づく立入禁止や退避等に係るものに限る。)を課すこととし、具体的には次の(1)及び(2)のとおりとしたこと。

 なお、今回の改正により、これまで労働者に対する義務が生じていた内容に変更が生じるものではないこと。

(1)場所に関わる危険の防止(立入禁止、退避等)に係る規定の改正

ア 特定の場所への立入禁止等の対象拡大(改正安衛則第 128 条第1項、第 151 条の7第1項、第 151 条の9第1項、第 151 条の 48 第2項、第 151 条 の 62 第2項、第 151 条の 70 第2項、第 151 条の 95、第 151 条の 96、第 151 条の 97 第1項、第 151 条の 140、第 151 条の 142、第 151 条の 164、 第 151 条の 166、第 158 条第1項、第 164 条第3項第3号、第 171 条の2 第3号、第 171 条の6第1号、第 180 条第3項第2号、第 187 条、第 194 条の6第1号、第 205 条第2号、第 224 条、第 245 条第1号、第 274 条の 2第2項、第 288 条、第 312 条第2号、第 313 条第3号、第 361 条、第 365 条第1項、第 372 条第1号、第 386 条、第 389 条の8第2項、第 411 条、 第 415 条、第 416 条第1項、第 420 条第2項、第 433 条、第 452 条、第 453 条、第 461 条、第 478 条第1項、第 481 条、第 517 条の3第1号、第 517 条の7第1号、第 517 条の 11 第1号、第 517 条の 15 第1号、第 517 条の 21 第1号、第 530 条、第 532 条の2、第 552 条第2項第2号、第 563 条第 3項第2号、第 564 条第1項第2号、第 575 条の6第2項第2号及び第 575 条の7第2号、改正ボイラー則第 29 条第1号、改正クレーン則第 28 条、第 29 条、第 33 条第1項第2号、第 74 条、第 74 条の2、第 75 条の2第1項 第2号、第 114 条、第 115 条、第 118 条第1項第2号、第 153 条第1項第 2号、第 187 条及び第 191 条第1項第2号並びに改正ゴンドラ則第 18 条関 係関係)

 事業者は、危険が発生するおそれがある場所には、必要がある労働者を除き、労働者が立ち入ることを禁止し、その旨を見やすい箇所に表示する義務があるところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて、必要がある者を除き、当該場所で作業に従事する者が立ち入ることを禁止し、その旨を見やすい箇所に表示しなければならないこととしたこと。

 

イ 特定の箇所への搭乗禁止の対象拡大(改正安衛則第 116 条第1項、第 151 条の 13、第 151 条の 50 第1項、第 151 条の 51 第3項及び第4項、第 151 条の 72 第1項、第 151 条の 73 第3項及び第4項、第 151 条の 81 第1項、 第 151 条の 101、第 151 条の 105 第1項、第 151 条の 119 第1項、第 151 条の 144 第1項及び第2項、第 151 条の 168 第1項及び第2項、第 162 条、 第 194 条の 15、第 194 条の 20 第1項、第 221 条並びに第 223 条、第 531 条並びに改正クレーン則第 26 条、第 27 条第1項及び第2項第3号、第 72 条、第 73 条第1項及び第2項第3号、第 112 条、第 113 条第 1 項、第 186 条第1項並びに第 207 条第1項関係)

 事業者は、車両系荷役運搬機械等の乗車席以外の箇所など危険な箇所に労働者を搭乗させてはならないとされているところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含め、危険な箇所に搭乗することを禁止しなければならないこととしたこと。

 

ウ 事故等発生時の退避の対象拡大(改正安衛則第 150 条の3第2号、第 150 条の5第2号、第 274 条の2第1項、第 321 条、第 322 条第2号、第 389 条 の7、第 389 条の8第1項、第 479 条第2項及び第3項、第 517 条の 16 第 2項及び第3項、第 575 条の 12 並びに第 575 条の 13 並びに改正ボイラー 則第 19 条関係)

 事業者は、特定の事故等が発生し、労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、事故等が発生した場所から労働者を退避させる義務があるところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて、当該場所で作業に従事する者を退避させなければならないこととしたこと。

 

エ 退避に関連する措置の対象拡大(改正安衛則第 24 条の6、第 389 条の 10、 第 389 条の 11 第1項、第 575 条の 14 第1項、第 575 条の 15 第1項及び 第 575 条の 16 第1項関係)

 事業者は、退避に関連する措置として、避難用器具などについて労働者の人数分以上の備付けや労働者に対する備付け場所及び使用方法の周知、退避 等の訓練の実施などの義務があるところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて、措置を講じなければならないこととしたこと。

 

オ 特定の場所での火気使用の禁止の対象拡大(改正安衛則第 312 条第3号、 第 313 条第4号、第 318 条第3項及び第 321 条の2第1号関係)

 事業者は、特定の場所においては、労働者が喫煙など火気を使用することを禁止する義務があるところ、請負関係の有無に関わらず、労働者以外の者も含めて、当該場所で作業に従事する者が喫煙など火気を使用することを禁止しなければならないこととしたこと。

 

カ 悪天候時の作業禁止の対象拡大(改正安衛則第 151 条の 106、第 151 条の 145、第 151 条の 170、第 245 条第2号、第 483 条及び第 522 条並びに改正 クレーン則第 33 条第1項第3号、第 75 条の2第1項第3号、第 118 条第 1項第3号、第 153 条第1項第3号及び第 191 条第1項第3号関係)

 事業者は、悪天候のため特定の作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業に労働者を従事させてはならないとされているところ、労働者以外の者も含めて、悪天候時に当該作業を行わせてはならないこととしたこと。

 

キ 表示による必要事項の周知の対象拡大(改正安衛則第 273 条関係)

 事業者は、化学設備(配管を除く。)に原材料を送給する作業による爆発又 は火災を防止するため、必要な事項について労働者が見やすい位置に表示する義務があるところ、労働者以外の者も含めて、見やすい位置に表示しなけ ればならないこととしたこと。

 

(2)労働者以外の者による立入禁止等の遵守義務に係る規定の整備

ア 労働者以外の者による立入禁止の遵守義務の対象拡大(改正安衛則第 128 条第2項、第 416 条第2項関係)

 労働者は、立入りが禁止された場所には立ち入ってはならないとされているところ、(1)アにより新たに立入禁止の対象とされた労働者以外の者も含め、当該場所で作業に従事する者は、立入りが禁止された場所には立ち入ってはならないこととしたこと。

 

イ 労働者以外の者による特定の設備使用の遵守義務の対象拡大(改正安衛則 第 101 条第5項、第 151 条の 45 第2項、第 151 条の 67 第2項、第 427 条 第2項、第 449 条第2項、第 526 条第2項及び第 551 条第2項関係)

 労働者は、特定の場所では踏切橋や昇降するための設備などを使用しなければならないとされているところ、労働者以外の者も含め、当該場所で作業に従事する者は、当該設備を使用しなければならないこととしたこと。

 

ウ 労働者以外の者による搭乗禁止の遵守義務の対象拡大(改正安衛則第 116 条第2項、第 151 条の 50 第2項、第 151 条の 51 第5項及び第6項、第 151 条の 72 第2項、第 151 条の 73 第5項及び第6項、第 151 条の 81 第2項、 第 151 条の 105 第2項、第 151 条の 119 第2項、第 151 条の 144 第3項、 第 151 条の 168 第3項並びに第 194 条の 20 第2項並びに改正クレーン則 第 186 条第2項及び第 207 条第2項関係)

 労働者は、車両系荷役運搬機械等の乗車席以外の箇所など危険な箇所に搭乗してはならないとされているところ、(1)イにより新たに搭乗禁止の対象とされた労働者以外の者も含め、当該場所で作業に従事する者は、搭乗してはならないこととしたこと。

 

エ 労働者以外の者による火気使用禁止の遵守義務の対象拡大(改正安衛則第 279 条第2項、第 291 条第2項及び第 318 条第4項関係)

 労働者は、特定の場所では火気を使用してはならないとされているところ、 (1)オにより新たに禁止対象とされた労働者以外の者も含め、当該場所で作業に従事する者は、火気を使用してはならないこととしたこと。

 

 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について【厚生労働省HP】

 第161回労働政策審議会安全衛生分科会(資料)(個人事業者等に対する安全衛生対策について)

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