労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律について
行政の動向
2025-06-27
いわゆるカスタマーハラスメント、求職者等へのセクシュアルハラスメント等のハラスメントのない職場づくり等を図るため、労働施策総合推進法等が改正されました。
第1 改正の概要
1 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の一部改正(改正法第1条及び第2条関係)
(1) 職場における労働者の就業環境を害する言動に関する規範意識を醸成するための国による啓発活動
国は、職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策の充実に取り組むに際しては、何人も職場における労働者の就業環境を害する言動を行ってはならないことに鑑み、当該言動が行われることのない就業環境の形成に関する規範意識の醸成がなされるよう、必要な啓発活動を積極的に行わなければならないものとすること。(第4条第4項関係)
(2) 治療と就業の両立支援対策
ア 事業主は、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、就業によって疾病又は負傷の症状が増悪すること等を防止し、その治療と就業との両立を支援するため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。(第27条の3第1項関係)
イ 厚生労働大臣は、アの措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を定め、これを公表するものとすること。(第27条の3第2項関係)
ウ イの指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第70条の2第1項に規定する指針と調和が保たれたものでなければならないものとすること。(第27条の3第3項関係)
エ 厚生労働大臣は、イの指針に従い、事業主又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができるものとすること。(第27条の3第4項関係)
(3) 職場における顧客等の言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等
ア 事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(以下(4)のオにおいて「顧客等」という。)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下このア及び(4)のアにおいて「顧客等言動」という。)により当該労働者の
就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないものとすること。(第33条第1項関係)
イ 事業主は、労働者がアの相談を行ったこと又は事業主によるアの相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。(第33条第2項関係)
ウ 事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずるアの措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならないものとすること。(第33条第3項関係)
エ 厚生労働大臣は、アからウまでの事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとすること。(第33 条第4項関係)
(4) 職場における顧客等の言動に起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務
ア 国は、労働者の就業環境を害する顧客等言動を行ってはならないことその他当該顧客等言動に起因する問題(以下この(4)において「顧客等言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、各事業分野の特性を踏まえつつ、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならないものとすること。(第34条第1項関係)
イ 事業主は、顧客等言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずるアの措置に協力するように努めなければならないものとすること。(第34条第2項関係)
ウ 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないものとすること。(第34条第3項関係)
エ 労働者は、顧客等言動問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる(3)のアの措置に協力するように努めなければならないものとすること。(第34条第4項関係)
オ 顧客等は、顧客等言動問題に対する関心と理解を深めるとともに、労働者に対する言動が当該労働者の就業環境を害することのないよう、必要な注意を払うように努めなければならないものとすること。(第34条第5項関係)
(5) その他
その他所要の規定の整備を行うこと。
2 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部改正(改正法第3条関係)
(1) 求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等
ア 事業主は、求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定めるもの(以下この(1)のア及びイ並びに(2)において「求職者等」という。)によるその求職活動その他求職者等の職業の選択に資する活動(以下この(1)のア及び(2)のアにおいて「求職活動等」という。)において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求
職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないものとすること。(第13条第1項関係)
イ 事業主は、労働者が当該事業主による求職者等からのアの相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものとすること。(第13条第2項関係)
ウ 厚生労働大臣は、ア及びイの事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとすること。(第 13条第3項関係)
(2) 求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務
ア 国は、求職者等の求職活動等を阻害する(1)のアの言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この(2)において「求職活動等における性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならないものとすること。(第14条第1項関係)
イ 事業主は、求職活動等における性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずるアの措置に協力するように努めなければならないものとすること。(第 14条第2項関係)
ウ 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、求職活動等における性的言動問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないものとすること。(第14 条第3項関係)
エ 労働者は、求職活動等における性的言動問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる(1)のアの措置に協力するように努めなければならないものとすること。(第14条第4項関係)
(3) 男女雇用機会均等推進者
事業主が選任する職場における男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者の業務として、事業主の講ずる(1)のア及び(2)のイの措置等を加えるものとすること。(第19条関係)
(4) その他
その他所要の規定の整備を行うこと。
3 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の一部改正(改正法第4条関係)
(1) 基本原則
女性の職業生活における活躍の推進に当たり留意すべき事項として、女性の健康上の特性を加えるものとすること。(第2条第1項関係)
(2) 基本方針
女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針において定める事項として、職場において行われる就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な措置に関する事項を加えるものとすること。(第5条第2項第3号関係)
(3) 基準に適合する認定一般事業主の認定の基準
基準に適合する認定一般事業主(国及び地方公共団体以外の事業主であって、女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関し、当該取組の実施の状況が優良なものであることその他の厚生労働省令で定める基準に適合するものである旨の認定を受けたものをいう。)の認定の基準として、事業主が講じている2の(1)のアの措置に関する情報を公表していることを加えるものとすること。(第12条関係)
(4) 特定事業主行動計画の変更手続の見直し
特定事業主(国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員で政令で定めるものをいう。以下同じ。)が特定事業主行動計画(特定事業主が実施する女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画をいう。)について内閣府令で定める軽微な変更を行う場合には、その事務及び事業における女性の職業生活における活躍に関する状況把握、女性の職業生活における活躍を推進するために改善すべき事情についての分析等を行う義務を課さないものとすること。(第19条第3項及び第4項関係)
(5) 女性の職業選択に資する情報の公表の義務の適用拡大等
ア 一般事業主(国及び地方公共団体以外の事業主であって、常時雇用する労働者の数が100人を超えるものに限る。)が、厚生労働省令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事業における女性の職業生活における活躍に関して定期的に公表すべき情報に、その雇用する労働者の男女の賃金の額の差異及びその雇用する管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合を加えるものとすること。(第20 条第1項及び第2項関係)
イ 特定事業主が、内閣府令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事務及び事業における女性の職業生活における活躍に関して定期的に公表すべき情報に、その任用する職員の男女の給与の額の差異及びその任用する管理的地位にある職員に占める女性職員の割合を加えるものとすること。(第21条関係)
(6) 期限の延長
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の有効期限を 10 年間延長し、令和18年3月31日までとすること。(附則第2条第1項関係)
(7) その他
その他所要の規定の整備を行うこと。
第2 施行期日等
1 施行期日
改正法は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、次に掲げる事項は、次に定める日から施行することとすること。(附則第1条関係)
(1) 第1の1の(1)及び3の(1)、(2)及び(6)並びに第2の2の(2) 公布の日
(2) 第1の1の(2)並びに3の(4)及び(5) 令和8年4月1日